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August 31, 2005

熊川哲也・シカゴ

熊川哲也「放蕩息子」楽日(29日)、シカゴ(31日)。

踊り系を続けて2作品。

熊川哲也。世の中の評判に納得した。「素晴らしい跳躍」「男性トッププリンシパル」「少ししか踊ってくれない」全部を経験した。1幕めの「パッシングヴォイス」この夜の彼はこの作品に尽きる。ダンサーとしての彼、振り付けの才能。まるで、妖精のようだ、と思い、見終わって目に焼き付いた彼の跳ぶ姿を反芻して、悪魔のような、とさらに思う。
ふわっと空に浮かび、そのまま伸びやかに時が止まり、すっと地に降り立っている。着地の音がない。静寂が彼の飛翔を際だたせる。背を向けて上梓をさざ波のように左右にのばす。柔らかく波打つ後ろ姿の肩と腕のラインに息が止まる。オペラグラスで彼だけを追っている。相手方のダンサーが目に入らない。こんなにきれいな男性の体の線を初めて経験した。この作品の彼が3幕まで続いていたら、完全にはまっていたと思う。2幕目の彼はサブで物足りない。3幕目の「放蕩息子」は、作品として、疑問が残る。彼の体のラインの美しさや跳躍を味わいたい観客には応えていない。

15000円、バレエのチケットは生オーケストラだから、高いのはしかたないかもしれないのだが、それでも、彼を味わえたのは30分に満たないだろう。チケットの料金を考えると、もうすこし、いえ、目一杯彼を堪能したいとは思う。でも、席も良くないし(実際には想像していたよりは見やすかったが)「美のリストが増えた夜」に幸福な満足感があった。

一級品の踊りを目撃してしまった目で、ブロードウェイミュージカル「シカゴ」を観た。

昨年の「キャバレー」の感激があったので、熊川哲也よりもはるかに期待していた。席もよかったし。しかし、ステージが始まってすぐに、「あれ?」という感じが起きる。最初のダンスが一昨日の一級品と比べてかなり落ちるのだ。1幕目は、何カ所かで寝てしまった。舞台はつまらないと眠くなる。とても正直で残酷だ。歌とセリフの面白さで見せる作品で「英語」の壁があった。それを差し引いても、作品がつまらなかった。主人公の女優にキャラクターも容姿もダンスも魅力を感じなかった。殺人さえスターダムの扱いをする社会を批判している?なんだか、主人公への反感だけがつのった。キャバレーの「権力と個人」へのメッセージ性が私の性に合っているのだろう。金や名声に踊る人間に興味がないので、それを一緒に笑う気にもなれないのだろう。
私にとっては少しも知性を感じられず、俳優にすうっと感情が落ちることもなく、それゆえに、飽きてしまう作品だったのだね。ただ、この作品を好きな人の感想を聞いてみたいとおもった。私には感じられないところにあるはずの良さを知りたいと。

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