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September 23, 2005

亀も空を飛ぶ・四月の雪・BYJ

少し予想外の出来ごと。

2本の映画による2つの幸福感に満たされる夜のつもりではじまった1日が、
2つの「とどけないもどかしさ」で、知恵の輪を置いて指先に神経を集めるような夜になっている。

イラン人監督による北部イラク(クルド人居住区)の少年たちの生活を描いた「亀も空を飛ぶ」。
登場する子供たち全員が現地の素の子供たち。彼らを役者と呼ぶべきではない。どんな俳優もこういう子供たちには勝てない。ドキュメンタリーに近い寓話のなかで、彼らが生きる状況そのものに圧倒される。ほんとうに生活の基盤がすべて破壊され、人間が殺され尽くして、まともな大人は村に残ってないのだろう。子供たちは地雷を掘って売りさばき、生活に必要な現金をかせいでいるのだろう。女の子は兵士にレイプされ、産まれてしまった子供を憎みながら弟といつわって生活しているのだろう。そして、少しの英単語とTVアンテナを建てる知恵と、先を読み仲間を仕切る力に長けた人間がいれば(それが子供でも)、たくさんの為すすべのない者たち(子供、村の役人、長老たち)が、生き延びてゆけるのだろう。

こうして言葉にしながら、映画が語っていた事々を解きほぐしていって、やっと柔らかい感情がにじみ出る。
それにしても、徹底的に男の視線にたった映画なのだった。自分の産んだ子供を、自分自身と子供の酷い状況から解き放つために殺す少女。主人公の少年が少女に恋心をいだいても、少女の側に優しい感情は生まれない。少女の傷を癒す場面はひとつもない。少女は1度も笑わない。だから、乾いた気持ちのまま見終わってゆく。その社会では、女たちはさらに1段下の絶望的な状況にいるのだと、思い知らされて。

あまりにも乾いた感情で終わったあと、潤いを感じたくて、四月の雪のBYJに会いに行った。

・・・・・会いたかったBYJに会えなかった。

妙な物足りなさに気持ちが沈んだのはなぜだろう。1回目に見たとき、シーンとシーンの間に気持ちが集中しながら感じた興奮を、今日感じられなかったのはなぜだろう。見る時によってにこんなに感じが違うのは。
BYJに会いに、癒されに行った、そこで間違った?

これは映画ではないと、わたしは言ったよね。そう、この作品は「シーン」を繋げていった映像作品。観客のために見え方をあらかじめ計算(考慮)してつくられてはいない。

ゴッホが、彼が見えたものを彼が描きたいままに描いたように、ホジノも、彼に見えたシーンを彼が切り取りたいままに繋げている。ホジノが切り取りたかったシーンの中に存在するインスだけを見せている。

ゴッホの絵が絵として破綻しているように、この作品も映画としては破綻しているのかもしれない。

1週間前は、ガラガラのお台場の映画館のシートに無心に座り着いた。今日は、渋谷の喧噪と彼のファンとそれを揶揄する世間の視線にかすかに嫌悪を抱きながら、混み合った映画館の座席に無理矢理座った。
映画を受け取ろうとする気分が全く違っていた。見る側の気分でそれほど見え方が違うのだとしたら、観る者にそこまでの繊細さを求めるこの作品は、映画ではなく、絵や陶磁器や詩と同じ筺に入れるべきもの。

どうすることも出来ない孤独。だれかに寄りかかりたくなるゆれ。そういった切なさを、もちろん味わうことは出来る。
だけど、この作品の最大の魅力は別のところにある。「さあ、あつめられる証拠写真はこれだけです。これだけしか集められなかった証拠写真をあなたはどう繋げてどう想像しますか」という「乱暴な」語り口。この作品の魅力はそこだ。役者の演技は必要ない。俳優はおきてしまったことの証拠写真にうつる人間として必要とされているだけだ。観客が求める心を揺さぶるような情緒的な映像はすべて捨てられてしまっていても、不思議ではない。シーンをつなぐだけの連続を魅力と感じるか説明不足と感じるかで、見終わったときの満足感は正反対になる。そういう作品。

この作品は役者のための作品ではない。BYJのファンで本当に満足できる人はそんなに多くないかもしれない。かれの魅力を存分に味わえる作品ではないもの。

BYJはファンたちの前で、役者を演じている。
わたしは、役者を完璧に演じようとしている彼が、役者として演じるキャラクターに、気持ちを落下させる。
ホジノとの作業で彼は、今までしてきたことを捨てなければならなかった。役者を演じないでキャラクターにならなければならなかった。彼にとって苦痛だった・・・でも、きっと、かれはそれも完璧に役者を演じるために必要な過程だったと思っている。そんな気がする。

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Comments

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