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June 14, 2006

ジゼル 熊川哲也

眼に幸せ、気持ちの良いおはなし、叙情。
そういうことを、求めています。
しばらく演劇が続いたあと、熊哲Kカンパニーのジゼルを見て、
バレエが、言葉の代わりに体の線と動きとでつたえる物語(演劇)なのだと、
幸せな気持ちで認識しました。こういう幸せを味わえることが、バレエの公演でもめったにないにしても、この夜は幸福でした。

ジゼルは物語としてはシンプルですから、言葉を使えば言葉が余ってしまうかもしれません。
アルブレヒトとジゼルの初々しい喜び、裏切るつもりではなかった痛切な裏切り、ジゼルの魂を狂わせる悲痛。
ウィリ(死霊)たちの、悲しみを越えた静寂、そして生者にむける時を刻まない愛。

竜也がセリフでする事を、熊川哲也は踊りでする。それは実にシンプルな違いで、ふたりの間に何の差異も感じられないほどです。際だって叙情がたつ。ほかの何ものも見えずにいてよし、となる。

その上に、昨夜のジゼルの幸福はシンクロの美しさでした。
ジゼルを踊るヴィヴィアナ・デュランテ。身長は日本人ダンサーより小さく、とりたてて手足が長いわけでもない。身体的に日本人より恵まれているわけではない彼女が手を輪にして伸ばすそのさまは、伸びやかに美しく蝶の羽が震えるよう。足を跳ね上げるその線の、速く、それでいて止まる寸前の優しいこと。
アルブレヒトとジゼルの、シンクロする体の線はまるで1つの心が2つの線で重なり合うかのようでした。「すごい」となんども口にしてしまった。ふたりの線の、角度も動きも高さも寸分も狂わずシンクロするさまは、バレエを見て初めて味わう快感でした。こういう美の快感があるのが驚きでした。

群舞も綺麗だった。ウィリの夢幻のような白いチェチェの揺れるさま。日本人のダンサーが多かったと思うけれど、レニングラードの白鳥より、NYシティバレエより、観客の心をとらえていました。群舞で踊りのさなかに拍手が湧くのは、実に気持ちの良いことでした。
それから、舞台背景、衣装、照明。彩度を統一し、茶、朱、柿色、サーモンピンク、色彩のグラデーションをつくる衣装。木漏れ日と、最後にアルブレヒトが浴びる夜の終わりを告げる一条の明けの光線。

熊川哲也さんがもっと踊って欲しいとは願いました。ソロで踊ったのはわずか数分もあったかどうか。そのわずかに、神をも恐れぬ跳躍。ソロに入る時には客席に緊張がはしり、恍惚の数分が終われば「このためだけに18000円・・・。」と嘆息。それでも、その時空間のためにまた間違いなく、18000円払うでしょう、まったくもう・・・。

藤田嗣治の時にも思った。
美しいものに興奮できる幸せを時々味わえば、また、しばらくしのいでゆける、と。
絶対取りたいチケットがまた増えて、幸せなんだか、苦労なんだか。

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Comments

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