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November 03, 2006

真田さんのハムレット

真田広之さんのハムレット(1995年 蜷川幸雄演出。銀座セゾン劇場。中継録画)を見ました。

同じ時期の真田さんのTVドラマ「タブロイド」でくらくらきていました。真田さん、すごい。これを見るまでは、「真田くん」だったのですが、完全に「さん」に昇格。ハムレットも同じでした。この人のせりふは意味不要、せりふは言葉ではなくて「息」なのです。で、彼から発せられる息が、舞台の上の相手の体の中にナイフで切り裂いてゆくように入り込んでゆくのです。私の中にも入り込んで!と、気がついたら見ている自分もお願いしている有様。

シェークスピアの饒舌な言葉遊びが、音遊びの甘い息になって入ってくるから、全然邪魔じゃない。

唯一だめなのは、意味を持った言葉で構築されているモノローグの場面。
竜也がもっとも得意とするこの場面が、真田さんはだめ、と言うより、彼にはいらない、というか・・・・。

録画を見たので、舞台全体が見えない。彼が階段上で独白している場面、おっ、これは良いぞ、と思ったら、画面に映っていなかっただけで、舞台上には彼の前方にオフィーリアがいました。やっぱり~。
彼は彼の目の前にいる誰かに語るときに、何かを発するのです。その相手が、松たか子でも、三田和代でも、男優でも。
甘く、それでいて凛と涼やかに語りかけてくる息、そんなせりふに意味はいらないのです。竜也が言葉で世界をつくってしまうときに、真田さんは言葉を息にして世界を融かしちゃっている。そして、彼と相手との間だけに何かが浮かび上がる。
「尼寺へ行け」、もう最高でした。彼に言われたら、どんな女性も迷いなく尼寺に行きそう。
母親に言う「今晩は(新しい夫の閨へ行くのを)我慢するのです」、もう、絶対我慢しちゃうよ!
これは竜也には出来ないわざ。真田さんの勝ち。

真田さんのハムレットは、言動が首尾一貫していません。ハムレットの性格をおってゆくと、高貴なのか賢いのか激情なのか優柔不断なのか、さっぱりわからない。でも、それが、シェークスピアのこの作品の名高い難しさなのです。だから、悩める主人公と言われてきたのです。
そういえば、竜也のハムレットは悩んでいなかったな。だから、画期的に意味の分かるハムレットだったのですね。竜也のハムレットは一途な美しさの輪郭がくっきりときわだって、観客を魅了し、観客はその存在感に圧倒されたのです。
真田さんのハムレットは、ハムレットらしいハムレットです。言動は矛盾に満ちている。一歩間違えばただのえらそーな言い訳男。しかし、それが全然不快でない、気にならない、そんなことどーでもいい、彼がオフィーリアの膝に頭を乗せスカートを被るそのすがたで、男ってこうよね、どんなに矛盾してても許せる、と、思えてしまうわけです。(なんだかなぁ)

そういうわけで、これもまた、無駄な演出のいらない天下一品のハムレットではありました。
クローディアス、ガートルード、オフィーリア、ボローニアスは竜也版より格段に巧い役者さんたちで、特に三田和代さんは、悲劇にふさわしい王妃でした。

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Comments

はじめまして!! Yahoo!のトップから『真田広之 ハムレット』で検索をかけたところ、こちらのページが出てきて、コンタクトさせていただいております(>_<) 実は、もう何年も前に、真田広之さんと松たか子さんの舞台ハムレットが観たくて、VHSかDVDを…と探していました。WOWOWで放送されたことを知ったのも放送からかなり後で、身近に持っている人もいなくて、諦めていました。やっぱり思い出してしまい、検索をかけた次第です。 突然の見ず知らずの者からの申し出で、大変失礼かと思いますが、中継録画のものをダビングしていただくことはできませんでしょうか?(≧人≦) もしよろしければ、ご連絡くださいませんか?どうか、お待ち致しております。

Posted by: Rie.K | March 30, 2007 at 10:50 PM

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