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September 02, 2007

ヴェニスの商人

天王洲銀河劇場。
海だったところにオフィスビルを何棟か建てて、ビルのひとつに劇場を入れた。ここに劇場をつくろうと考えた人間は、人が集まる場所をつくりたかったのだろうか。無機質なオフィスビルのなかに。
舞浜にはTDRという熱気渦まく巨大カプセルがあるけれど、カプセルの外には人の集まる街はない。
お台場も、えびすガーデンプレイスも、TDRのようにこぎれいだけど、熱気は何年たってもわき上がらず、こぎれいなビルの外はすかすかのまま古びてゆく。

8月24日金曜日・9月1日土曜日。天王洲は、ビルの中さえ、すかすかで、がらんとしていた。
こんな立地の劇場を買って、ホリプロは何をしたいんだか。

芝居は、起きたままみられる夢。さめたあとも幸せでいられる夢。芝居がはねたとき、夢の外に出て人混みの中を歩くのが、きゅんと胸のすく楽しみなの。殺風景な空間に劇場を置かないでほしい。


ヴェニスの商人。7ヶ月ぶりの竜也を見に行きました。7ヶ月ぶりの竜也は元気でした。
市村さんと西岡さんと寺島さんと楽しそうに舞台の上にいた。

いろいろ言いたいこともあるけど、言っても仕方ない。2回見れば言うべきことが湧くかと思っていたけれど、やはり言っても仕方ないと思って。去年の今ごろはオレステスだったな。声のでない竜也を見て、言いたいことがあふれてきた。バッサーニオは・・・バッサーニオでは、竜也は私を向こうの世界に連れて行ってくれないのだと思う。
それで、わたしは、せめて巧さを味わいたくなるのだけれど、寺島しのぶさんの巧さを竜也に求めてはいけない。役者の巧さも舞台の快感なのだけれど、竜也のくれるものはそれではない。
彼が楽しんでいるとしたら、楽しんでいる竜也におかえりなさいと言って、彼を見るしかない。

作品については、山ほど言いたいことが湧く。悲劇なのか喜劇なのか。むろん結婚で終わる喜劇だ。得意の入れ換え勘違いで笑わせる喜劇。だけど、ユダヤ人シャイロックに光を当てると、悲劇にもなる。アルパチーノの映画はそうやってつくった。でも、芝居では喜劇の部分を消せない。脚本は喜劇なのだから。やっかいなのは、現代の日本では悲劇性の方が浸透しやすいこと。市村正親シャイロックにそれを見たい観客がたくさんいるだろう。そして、市村シャイロックが前面にでればでるほど、物語の統一感はなくなる。

戯曲をよめば、これはふたつのラブストーリーの交差が主軸の喜劇です。

アントーニオはバッサーニオを愛してる。心も体も財産も自分の肉(生死)さえ与えてバッサーニオの心を所有しようとする愛。いわばアイデンティティーを賭けた愛。ポーシャもバッサーニオを愛する。ポーシャにとってバッサーニオは自分が自由でいることの象徴で、これも、アイデンティティーのための愛。彼女はバッサーニオを手に入れるために運と知恵と財産をおしげなく使う。

財産家のアントーニオとポーシャが貧乏貴族のバッサーニオに夢中になるのは、何の不思議もない。だって彼は愛されるのが当たり前の男なのだから。ただし、ひとつの獲物をうふたりの狩人がねらえばぶつからないわけがない。ふたつの恋がぶつかる。そして、アントーニオの生死とポーシャの知恵のどちらもが、シャイロックと対立してためされる。つまりシャイロックはふたつの恋が乗る天秤ばかりの支点の位置にいる。シェークスピアは、滑稽な「恋の支点」に、娘を失った悲劇と人生の誇りと復讐を重ねたユダヤ人シャイロックを置いた。物語はそこでぐんと深くなる。おそろしい作家だ。

じゃぁ、バッサーニオはいったい何?
バッサーニオはね、火打ち石の火花。炎が燃える燃料。竜也はいつも、炎になってきたでしょう?だけど、今回は、アントーニオを、ポーシャを、シャイロックを、炎にさせる役目なの。彼らを発火させる役なの。彼らが燃えるための燃料なの。物語の主役ふたりが彼に恋をし、敵役シャイロックはキリスト教徒の「いかがわしい恋」を憎悪する。そのうえ、グラチアーノはバッサーニオのしっぽのように同じことをしたがるし、ランスロットはユダヤ人から貧乏貴族のバッサーニオに主人替えをする。みんなが、バッサーニオのまわりに来る。バッサーニオがこの騒動の原因なのだけど、でも、彼はちっとも悪くない。観客もみな、彼をほしくなってしまうのだから。
そんなバッサーニオを、彼に、やってほしいのだけれど。彼にはやれると、思っているのだけれど。

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Comments

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