« ラマンチャの男 | Main | 松尾スズキのキャバレー »

October 20, 2007

歌舞伎の幸せ  十月大歌舞伎

今年の舞台の神さまは、歌舞伎狂言文楽落語、古典の板の上においででしたか。

2007年10月18日、歌舞伎座 夜の部 一部 怪談牡丹灯籠 二部 奴道成寺

2月の仁左衛門&玉三郎の「兄妹」を見て以来、お二人が絡むものは見逃してはならないと心に決めていました。20年遅いよと言われようとも、今もなお、他の追随を許していないおふたりではありませんか。演目も分からないまま十月のチケットを取ってみれば、夏に本多劇場で聞いた志の輔師匠の噺が予習だったとは。これも円朝さんならではの、人の世の縁なのでしょう。楽しいことです。

一目惚れした男を恋いこがれる余り死んでしまった娘と娘に仕える姥が、幽霊になって恋しい男のもとに通ってくる。その老若の幽霊の足元を灯すのが牡丹灯籠です。落語では二人の鳴らす下駄の音が有名です。下駄の音にしても足元を灯す灯りにしても、この幽霊には足があり、無いはずの足元を照らす灯りが要る。
幽霊だけれど、生きている人と変わらない。
堅い心があり弱い体がある。それは生きている人間以上かもしれない。
これだけで、すでにこの話はものすごく魅力的です。

生きている男新三郎は、恋しい娘が現れてひととき喜ぶのですが、実は幽霊だと知って恐ろしくなる。娘が自分のもとに入ってこられないようにお札を張り、お守りの観音如来を身につける。
これって、ずいぶんと冷たい男ではありませんか。せめて、成仏するように供養するとか出来ないのか。焦がれて死んだお露が哀れではないのか。二人であの世で暮らしても良いじゃないか。我が身だけが大事なのか。ええぃっ、こんな男、取り憑いて殺してしまえ。
死んだ娘の哀れさと生きている男の薄情が、お露と新三郎の最後の濡れ場をぞっとするほど美しく見せるのです。20年前の初演ではこの二人も玉三郎&仁左衛門で演じたそうです。あぁ、、、、、それを見たかった。

七之助のお露は立っている姿は幽霊らしくキレイでもあるのですが、お人形の域を出ず。恋い焦がれる心が見えない。
愛之助さんは今回初めて見せていただき、かなり期待していたのですが、姿形はキレイだけれど、それだけだった。生きてる人間の狡さ哀れさを隠し持って欲しかったなぁ。
この二人で場をさらうことも出来たはずの役どころだったと思うのに、「仁玉の前座」の存在感でしかなかった。残念。
でも、作劇としては、面白かった。部屋に灯されるあんどんの明かりを模した照明、幽霊二人の着物の裾が闇の中で消えている様子、客席を舞う牡丹灯籠、どれも楽しい趣向です。(攻撃的な現代劇の演出にはほとほと疲れてしまった今日この頃)

幽霊の頼みをカネで受けて、新三郎のお札をはがし観音如来を奪ってしまうのが、今夜の主人公、仁左衛門さんの伴蔵とその妻玉三郎演じるお峰夫婦。お峰が出てきて、のけぞったね。貧乏女房お歯黒まで塗った小汚い玉三郎ではありませんか。
しかし、この小汚い女房が、めんどくさそうに立ち居しながら、ぶつぶつ「お酒は残しとけ」だの「そこまで話されたら気になるじゃないか」だの他愛のないしゃべりをする様の、可愛らしいことったら!!!
旗本の息子新三郎の便利屋をやって小遣い程度の小金をもらいようやく生きている、男としてなっちゃいないなさけない伴蔵。でもどこかにちゃんと人間らしい心根がある。臆病で小心なくせに貧乏から抜けられる夢をつい見てしまう姿に「あなたはわたし」と思ってしまう。伴蔵だって理由があってやっているんだって。悪い奴の中の色気どころか、情けないずるい奴の中にも色気を感じさせてしまう仁左衛門さんって、、、!
そして、なによりも、横着で小心な、どこにでもいるちょっといけない夫婦の、絶妙な掛け合い。
この二人の、アドリブとさえ思わせるほど自然な掛け合いが、客席を湧かせながら、延々と場面を変えて続くのです。幸せ~。

久しぶりに、芝居を見た!!という満足感。

伴蔵が新三郎の死と引き替えに幽霊からもらった百両で、故郷で商いを始めて人並みに成功する。
しかし、貧乏なときにはぴたりと寄り添っていた夫婦を待っていたのは、伴蔵の浮気、知る人のない土地でのお峰の寂しさ、やってしまったことを知られるかもしれないという恐れにある男の身勝手さ。
夫に嫉妬する玉三郎のお峰は、怖いのだけれど、怖いけれど可愛さがうしなわれない。これはもう、この人の、天が与えた資質なのですね。堪能しました。
成金の伴蔵は、女房に問いつめられてしらを切ったりごまかしたり。ここでも駄目男ぶりをたっぷり見せてくれる。これだけ駄目男でも、男ってこんなものよと許したくなっちゃうから、いい男って得だなぁ。

はっきり言って、この話は、ひどい夫婦の身勝手な話です。嫌ぁな気分になってもおかしくない話です。因果応報のお話ですから。しかし、仁玉のお二人にかかると、人間だもの、そういうことはあるよ。生きてる人間が一番怖くて辛いよね。と、共感さえしてしまう。

もう一組の悪夫婦、錦之助さんの源次郎と吉弥さんのお国、こちらもよかった。仁玉のような絶妙な呼吸は望めないとしても、源次郎の女に狂わされた男の哀れさとお国の夫を裏切るほどの恋しい男への一途さにも、共感出来る芝居でした。

そして、最後の場面。伴蔵が邪魔になったお露を殺す。舞のような殺しの場面。二人とも綺麗だったなぁ。お峰はかわいそうだったなぁ。

玉三郎のお峰が嫉妬に狂ってさえあんなに可愛く、仁左衛門の伴蔵が妻を捨てるえらそう男になってさえあんなに香気があると、なんで伴蔵がお峰を殺さなくてはならないか、それを不思議におもってしまうという弱点はあるにはあるのですが。

二部 奴道成寺

そんなこんなで、仁玉の絶妙な芝居を堪能して、おまけの気分で座っていると、
一部で円朝さんを演じていた三津五郎さんが、白塗りの白拍子の装束で現れました。
え~、顔体のバランス違うのでは・・・と思ったのは、舞が始まるまでの三分の一秒くらいだった。
びっくり。
三津五郎さんが、こんなに踊りが上手な方とは。万作さんと同じ、芯が微動だにしない見事な舞に加え、奴姿の踊りの軽妙なこと。45分間、踊り通して、息も乱れず。足捌きも狂わず。歌舞伎とはこれだったか、と膝をうちたくなりました。良いものを見せていただき、ありがとうございました。

9月のラマンチャに続き、今月の「もう1回見たいなあ」のチケットでした。

|

« ラマンチャの男 | Main | 松尾スズキのキャバレー »

Comments

はじめまして。
私は20日の夜に観劇しました。
牡丹燈籠は以前から見てみたいなーと思っていた作品だったのでとても楽しみにしていました。
仁左衛門さんと玉三郎さんが好きなのですが、お二人のやりとりがとても面白かったです。さすがだなぁと思いました。「ちゅうちゅうたこかいな〜」は今でも頭から離れませんね(笑)
ポスターもとっても素敵でしたよね。写メ撮りまくりました(^-^;
仰るように、愛之助さんも七之助さんも綺麗だなと思いましたが、それ以上の物がなく…(--;)お二人とも好きなんですけどね。
ダラダラと書いてしまいすみませんm(__)m
今度は落語の牡丹燈籠を聴いてみたいと思います。
また遊びに来ます。

Posted by: まゆ | October 22, 2007 at 08:13 PM

Way cool! Some very valid points! I appreciate you penning this post plus the rest of the website is also very good.

Posted by: best dating sites | December 27, 2014 at 03:56 PM

Right now it looks like Wordpress is the best blogging platform available right now. (from what I've read) Is that what you're using on your blog?

Posted by: best dating sites | January 06, 2015 at 09:46 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« ラマンチャの男 | Main | 松尾スズキのキャバレー »