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October 20, 2007

松尾スズキのキャバレー

青山劇場 松尾スズキ台本演出。

ナチスが台頭してくるドイツ、1920年代の自由が最後に生き残ったキャバレーで、アメリカ人貧乏作家のクリフと踊り子の恋、下宿屋の未亡人とユダヤ系中年男の恋、そのふたつがともに生まれ壊れてゆく様を描くミュージカルです。

大きい青山劇場で立ち見まで出る満員の客席。その客席に終始笑いがおきて、最後は役者のカテコのあとに松尾スズキ本人のキャバレー芸のおまけつき。周囲のお客さんも大喜び。おまけのほうが、見たかった、見せたかった、芸だったのかな。

森山未来くんは良い雰囲気を感じさせる役者になっていたし、安部サダヲちゃんは、お笑い系可愛さ満点。

松尾台本演出は、随所に笑いを仕掛けてお話を滑らせてゆく。科白のように歌をこなし、踊りで場面に刺激を与える。安倍サダヲが司会者になってお客さんを上手にいじり、むしろ手堅さを感じさせる段取り。

つまり、ディズニーランド+TVバライティー番組中のミニドラマの公開録画みたいでした。だから、あんなにお客さんが入り、あんなにお客さんが喜んでいたのでしょう。満場の観客、みな楽しそうでした。

ただ、あれは、「舞台=神さまが降り立つところ」ではありませんでした。

タレントがマイクをつけて楽屋落ちのネタをしゃべる。大きな空間に生の声がまったくない、その消化不良感がつらかった。あの空間にマイクを通してしゃべると、人間の声が矮小に聞こえる。音楽のコンサートではマイクを通した声で空間を圧倒するけど、歌が本職でない人には、あの入れ物は大きすぎた。小気味の良い科白、笑いをとる間合い、ひっかける段取りはTVサイズ映像の才能として大したものです。
でも、舞台を使っているので勘違いしてしまったけれど、舞台とはまったく違うジャンルでした。

3年前に国際フォーラムでキャバレーが上演されたとき、ミュージカルってなんておしゃれなんだろうと思った。同性愛者やユダヤ人や不健全とレッテルを貼られた人々が「政治」の仮面を被った「ふつうの人たち」に押しつぶされてゆくさまをじっと見つめるMCの、妖しい光のなかの目に釘付けになった。作品中の歌に、MCの心の叫びに、涙がぼろぼろ出た。舞台って強い力を持っていると思った。
不思議だよね。同じ脚本同じ歌同じダンスシーンで。お話の進行上必要な悲劇や不幸のうえにみんなが笑えるくすぐりの調味料をかけて歌と踊りをまんべんなくトッピングして。訴えはない。強い思いもない。守るべき弱者もいない。あるのは「笑わせたい」「笑いたい」その人たちの望みだけ。今の日本の社会がこうなのかな。
同じ青山劇場で、ミュージカルの幸せを味わった先月のラマンチャ。あれが舞台界。今日のはテレビ界。

客席にいて、「場違いでした」の思いのみ。
わたしの言葉で語る分野ではなかった。仕方ない。目的とする到達点が違った。(こういうのをお門違いというのだろうな)。でも、未来くんとサダヲちゃんを見たかった。彼らを確認できてよかったです。

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Comments

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