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November 2007

November 17, 2007

通し狂言 摂州合邦辻

2007 11月16日 11:30 国立劇場大ホール 3階席センター寄り。新橋演舞場より遙かに見やすい3階です。
入りは7割くらいでしょうか。かなりご高齢の、落語よりはややリッチな風情。狂言よりは男性客が目立ちました。

おん歳70になられる坂田籐十郎さんの玉手姫。2月に文楽(人形浄瑠璃)と衝撃の出会いをした演目です。

上方の歌舞伎のそこはかとない香りがたつ舞台でした。
我當さんのはじめ上方の言葉の音が、脇の浄瑠璃語りとお三味線の音と合わせて美しい螺旋を描くような。
役者の白塗りの肌が照明に映えて、彩なす着物とともに、日本画のような。
丸本(浄瑠璃)歌舞伎は、文楽と歌舞伎の中間にあるようです。役者は文楽の人形ににて優雅に時には激しく動き、様式化されてこそ、人が浄瑠璃の語り音に乗れるのだとわかりました。

籐十郎さんにとっては、50年前の玉手姫が語り草になっている演目だそうです。さぞ美しかったことでしょう。
御年70でも、驚くほどきれいでした。親の家の戸口に立って「かかさま」と母を呼ぶ立ち姿。立っているだけで玉手の強く弱く切ない心がにじみ出てくる瑞々しさ。
無理があるのでは、などと浅はかにも考えていたのですが、動きも声も立ち姿も少しも枯れていないのです。
「枯れた味」で勝負しようとみじんも考えていない潔さ。それは舞台の神さまと正面から向き合い続けてきた者だけが神さまから与えられたご褒美なのでしょうか。

それにしても、(それだからこそ、)20歳の籐十郎さんの玉手を見たかった・・・。

2幕目秀太郎さんの家老の妻羽曳野が舞台をひき締めていました。先月の牡丹灯籠に続いて、愛之助さんは見目美しい。俊徳丸を演じていたらどんなだったかな。三五郎さんと、逆の配役のほうがどちらにも合っていたと思うのです。歌舞伎はこの辺の配役の窮屈さが時々邪魔になります。合邦妻おとくの上村吉弥さん、牡丹灯籠のお国とはうってかわった老け役。演じ手としての相当の力量を感じました。

4時間を越える通しは少々長く、途中しばしばうつつの世界へ。殺陣も踊りも思いっきりレトロ。そのまったりとしたお約束の雰囲気が上品で良かった。浄瑠璃と三味線の音が心地よく、この歌舞伎の主役は役者絵ではなく浄瑠璃の語りであると、納得しました。

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November 12, 2007

レインマン

2007/11/11 パルコ劇場

とても良かった!! ほとんど期待しないで行った日曜日渋谷の雑踏の中、パルコ劇場。
新聞記事の「鈴木勝秀によるシンプルな演出」。
シンプル - その言葉に、だまされたくなって、買ったチケットでした。
だまされて良かったぁ~。だまされ続けると、良いこともあるんだなぁ。だから、チケット買いやめられない。

舞台の真ん中に半透明の壁が立っている。壁は暗い青に、明るい白色に照明を浴びて変化します。舞台が回るたびに、壁が分かつ世界の形が変わります。
いい舞台は、まず気持ちの良い空間から始まるものです。

音響がやや悪くて、音楽が大きく響きすぎたものの、椎名演じる弟チャーリーと橋爪の兄レイモンドが、回り舞台をまわりながら、黄白色のライトを浴びる出だしは、物語を暗示する出だしです。

 ネットトレーダーの空疎なマネーゲームに心は飽き飽きしながらも、そこにしか居どころのないチャーリー。
 そこに突然、長い間断絶していた父親の訃報。
 数字に異常なこだわりを持つ高機能自閉症のレイモンド。
 施設で育ち施設で生活してきたレイモンドはチャーリーの兄であり、
 父の遺言状によって遺産のほとんどすべて300万ドルを相続。

物語はそこから始まります。
もちろんこれは、マネーゲームだけに価値をおく弟が、お金に何の価値も見ない兄との交流によって、人間性を回復させる物語です。筋書きは分かっています。分かっているのに、最後まで目を離せない作品に仕上がっていました。お見事!

脚本は、ごくシンプルです。
チャーリーの父への憎悪の理由がゆっくりと語られ、熱湯を浴びてできたやけどのためにいじめられた孤独な少年時代、心を閉ざし想像上のレインマンだけが友達の生い立ちがあかされてゆきます。
そして、兄弟のつながっていない会話が、少しの科白と小さな出来事の積み重ねで繋がりはじめます。
レイモンドが口にする「無意味な」数字(円周率、電話番号、ワールドカップの得点王)、二人のサッカー、ずっと持ち続けてきた大切な切手帳や不吉なことの起きるリストブック、毎日決まっている食事メニュー、

小さな小さな科白、幼い弟が舌足らずに呼ぶ兄の名-レイモンド-レインマン

余計な科白を極力排したシーンの圧巻は、椎名のチャーリーと橋爪のレイモンドのサッカーボールリフティングです。決められた科白はありません。ふたりで本気でボールを蹴ってつなぐだけです。20回続けるって?観客も不安と期待で息をのんで、椎名桔平くんも橋爪功さんもあっぱれ、成功したときの客席の拍手ったら。おかしいシーンなのに、いっぱいの満足感でした。

そして、チャーリーの父への憎しみが、無垢なレイモンドの不幸な事故からおこった誤解だと解き明かされてゆく・・・。
このあたりから、もうハンカチをはなせませんでした。
これだけ気持ちよく泣けると、爽快です。
1月のパルコ寄席の志の輔さんの中村仲蔵以来の大泣きでした。

役者が舞台の上で人間を演じきってくれる快感。パルコ志の輔寄席、コンフィダント、レインマン。今年はパルコ劇場のひとり勝ち!かな。(次点は歌舞伎座の十二夜と仁玉の牡丹灯籠でしょう)

橋爪さんのレイモンドは予想以上に可愛く、椎名くんのチャーリーは想像以上にピュア。
おふたりとも空間の中に流れる空気を、丁寧に演じてくれていました。
10月の松尾スズキさん、鶴瓶、緒方拳さんが「・・・・(あかん、映像世界と舞台は違う。がっくり)・・・・」だっただけに、テレビでの活躍で知っていたお二人が、生の舞台をきっちりつくってくださったことに、感謝。
そして、脚本の意図と俳優の演技を最大限に生かそうとする演出。
観客を驚かそうとか、感心させようとか、話題を呼ぼうとか、そういう演出に飽き飽きだったので、舞台の演出はこうでなくてはと思って、うれしかったです。

だから、帰りに、ぴあで、同じ演出家(鈴木勝秀さん)の来週の「欲望という名の電車」チケットを買いました。

わたしの観劇暦第5年度の開幕に、良い舞台を、ありがとうございました。

追伸 ちらしではお二人の写真の表情が作品と違う印象を与えていました。暖かさをもっと伝えるチラシであれば良かったのにと思いました。

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November 01, 2007

緒方拳 一人舞台 白野

2007 10月31日

bunnkamura特設会場。とても期待して見に行った。結論から言えば、期待していたものとはまったく違う時間だった。演劇ではなかった。舞台作品として批判する気持ちにはならない。これは、映像の俳優緒方拳さんが、自身の出自(舞台)に還って、惜別の辞を言う手段だった、と思う。(だまされたチケットということです。もちろん、舞台の世界では、だまされた方が悪い。)

声が出ていない。主要人物三人シラノ、ちぐさ、の演じ分けもなく。演劇の作品としては失望を否定できない。こんな役者さんだった?ところが、数日後NHKの大河ドラマに出ている拳さんは、今まで通り、重厚で存在感がある。つまり、彼はTV映像の人ということです。

勉強にはなったのかな。舞台の「勉強」チケットはふつうのサラリーマンには辛いです。

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