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December 05, 2007

蜷川&小栗旬の カリギュラ

2007/11/27 シアターコクーン 中二階 Lサイド立ち見席

オークションチケットのあまりの高騰に興味をそそられ、蜷川&小栗劇立ち見チケットをゲット。
定価(3500)プラス手数料(700)でゲットした翌週には、立ち見に1万円を超える値がついていた。
いやはや。

シアターコクーン。
客層は予想よりも幅広い。8割が女性で20代から50代まで満遍なく、きれいな男の子を見たいのは、若い女の子だけじゃないことを証明してる。
男性客はいかにも業界風。若いカップルがちらほら。この客層なら、興行界は大喜びだろう。

並んだ時間も含めて4時間。とても疲れました。が、カネカエセの徒労感はありませんでした。
いろいろな意味で勉強になったし、興味深い夜になった。

まず、小栗旬くん。
綺麗だったのだと思う。
彼をナマで見たのはこれで2度だけれど、きっと綺麗なのだろうと前回も思い、今回も思った。
内面から発する精神性ではなく、海老のような静止画の美しさでもなく、道具として綺麗。
これが蜷川演出にぴたりとはまっている。
演劇を大仕掛けの絵として見せる蜷川さんにとって、役者も衣装や美術と同じ道具。小栗旬くんは、見事に蜷川さんの意図に応える役者になっていた。

歌舞伎座(十二夜)では邪魔だった鏡張りは、奥行きがありサイドが狭いコクーンの舞台ではそれほど邪魔にならない。奥行きをさらにつける効果が十分あった。
鏡の枠の細いネオン管。これはほんとうに綺麗だった。クリスマスシーズンにもぴったりで心憎い。
青と白と黄色の細い光が縦に伸び、上部で装飾的な模様の曲線を描く。鮮やかに綺麗だった。
今まで観た蜷川演出の舞台で、一番綺麗な舞台美術だった。

衣装は織りの厚いドレス状の白。古代ローマのトーガの色を借りていながら宮廷ヨーロッパ調。これに「死」を暗示させる黒が時折入る。うまいなぁ。今まで観た蜷川演出作品で、一番よかった。

舞台上は実に美しく、衣装と美術と役者の肉体が観客の前に鮮やかに動く。
ひたすらおしゃれな雰囲気のなかで、なんとなく悲劇的。
「難解で膨大な」科白にちょっと飽きたころ、カリギュラが貴族たちをいたぶる、貴族の妻を連れ込む、シオピンと抱擁する、セゾニアを殺す、どれも思いっきりの具象で、蜷川さんと小栗くんの真骨頂。
さらに、作品の中間点で小栗くんの可愛いチェチェとお知り丸出しで観客をほっと笑わせ。
蜷川さんの描きたいカリギュラが、みごとに具象化されていた。

カミュが描きたかった世界からは遠くかけ離れた、ニナガワワールドの夜。


その夜観客の前に広げられた舞台から遠くかけ離れたところに、
カミュの描いた美しい世界が、
浮遊してゆく言葉を拾ってゆけば、
ありました。

万華鏡のようでした。
言葉が美しいのではありません。演出家は「言葉が詩のように美しい」と言っていましたが、違うと思います。
言葉の意味、表出している観念が、美しいのです。

ケレアの「若者をそこまで絶望させただけで、それは犯罪だ」
美しくて震えました。
「月を探している」カリギュラ。彼は自分の焼け付く理性の望むところが、永遠に手の届かぬものと知っていました。
自由であることが、他者に対して何でも出来ることではなく、生の内在する恐れから解き放たれることであることを知り、しかし、自己を解き放つことの出来ない閉ざされた身で、自由の虚像だけを実行するカリギュラ。
であれば、死のみが自由であり、しかし、自ら死ぬことを禁ずる倫理の中に生きる西洋の人間にとって、カリギュラの道だけが残された方法だった。他者を死=自由にしてやるという行為によって、自分もそこへ行きつく。
なんて美しい、はかない、むなしい、絶望的な、観念の世界でしょう。

しかし、ニナガワワールドでは、カミュの観念の世界は、みごとにスルーされていました。

小栗くんも勝地涼くん(シオピン)も横田栄司さん(エリコン)も、言葉が物体なのです。カミュの哲学を語る言葉がことごとく廃棄物になって板の上に積もってゆきました。
ケレア(長谷川博巳)だけが、カミュの美しい観念の世界を見せてくれたのだけれど。
しかし、それが、カリギュラの科白ではないために、あっけなくスルーしてゆく。

カミュが語る以上の不条理でした。
世界は、すでに、観念を失っている。哲学は降り積もる死語の山。難解で膨大だとしか受け取られない。
だったら、思いっきり具象的な美しさで飾れば良い・・・・それがこの夜の体験でした。

立ち見席からは、舞台よりも客席がよく見えて、観劇半分観客ウォッチング半分の4時間でした。
劇評の多くが「難解で膨大な」科白を小栗くんがみごとに体現した等々と。
絶望と希望の行き来する観念の世界を描く脚本の言葉が、「難解で膨大」としか受け取られないのであれば、
なるほど、
興業としては、蜷川さんのカリギュラが正解なのだと、心から、
ため息を飲み込んで、納得しました。

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