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December 27, 2007

十二月大歌舞伎 夜の部

12月14日
お直しで2階西さじき後方列へ。見切りが多く花道が見えないのは残念。それでも、ゆったり座れる桟敷席はやめられません。

菅原伝授手習鑑。
寺子屋を営みながら、かつて仕えていた主人の子菅秀才をかくまう武部とその妻戸波。
追及の手が迫り、幼い菅秀才を殺してその首を差し出さなくてはならない。武部は菅秀才を助けるために、同じ年頃の寺子屋の子どもを身代わりにしようと思いつく。
今の日本ではあり得ないはなしだろ~!しかも、自分の子ではなく、よそさまから預かっている子供の首を着るって言うんですよ。

しかし、歌舞伎ですもの。主君への忠義とかけがえのない子ども。二律背反する武家のあわれさ哀しさと自己犠牲の美がたっぷりと描かれる名作です。

圧巻は首実検をしに来た松王丸。今は敵方に回った松王丸こそ、身代わりになった子どもの親で、これが松王丸のかつてつかえた主人へ自己犠牲の大忠義だったというどんでん返し。

勘太郎の戸波(武部の妻)、福助の千代(身代わりの子どもの母、松王丸の妻)、このふたりの女が良かった。母のあわれさ。武家社会に生きる女のかなしい強さ。悲しみは、みせまいとすればするほど、透き通って美しい。役者がよく演じて、そう感じさせてくれました。

すごかったのは、海老。
妻戸波との苦渋の決断。松王丸との緊迫の対峙。物語の要の大役・・・。

何回か見てきた海老に、人気の美貌は分かりつつ、どうもぴんとこなかったのですが、ついにくっきりと分かった。流行語になったKY。彼は、「空気の読めない役者」だったのです。

あれだけ芝居がわからないなら、歌舞伎は苦痛でしかないでしょう。(歌舞伎は嫌いと公言している本人に、本気で同情しました。天然のお笑いの才能を感じました。そちらに進んだ方が幸せだろうに)
動いても科白言っても座っていても、ただ眉や口の形をつくって、言われたとおりそこにいる。むろんきれいな造形です。だから、まるで大きな置物みたいでした。

あれだけ空気読めない人を相手にしたら、勘が狂って自分の演技までおかしくなります。
そこを、一分のゆるみもなく、苦渋と悲劇と人としてのやさしさまで演じた勘太郎は大したものだと、心底感心しました。

二部は橋の助さんと三五郎さんの踊り。
対になっての踊りは、演者の力量に差を見せてしまう。
橋の助さんも悪くはなかった。ただ、三五郎さんの踊りは、世界が違うの。彼の踊りは見ている者が吸引されてしまう。天からの授かりものを観客に見せてくれる、そんな芸です。

最後は本日のお目当て。「ふるあめりかに、袖はぬらさじ」
有吉佐和子さんの戯曲をはじめて歌舞伎で演じる作品。

長かった。そして、よく分かった。玉は主人公お園が好きなのね。
ちょいとお馬鹿でとぼけてて、お気軽で、でも人情があって、弱い者同士やさしくて、弱い者だからこその意地があって、そこからにじむ哀しさに、観客はいとおしさを感じる。そんなお園が好きなのね。

玉三郎の芸者すがた、振り返りざまの立ち姿。
浮世絵を見て、こんなスタイルの人間がいるわけないと思っていたけれど、舞台の上にいました。浮世絵の見返り美人が、そこにいました。わずかにねじる曲線の美。
堪能しました。若いときはもっと綺麗だったことと知りながら、今でも、立つだけで絵になる。

勘三郎さんが、一幕の松王丸とうって変わって遊郭の主人役。ぴったり。本人こういう洒脱な役どころが大好きでしょう。それがひしひしと伝わってきました。
獅童は軽かった。七の助は薄幸の遊女役がはまっていました。

脚本に難ありと言われているわけが分かりました。
小説と戯曲の違い。小説は言葉で世界を作る。でも、演劇では言葉は3割でいい。科白で説明してはいけない。いちいち場面をつくるのは邪魔。役者のほんの小さなそぶりひとつに見入る。観る者はその集中を楽しむのです。説明調の科白と明らかに無用の場面を切って、2時間の戯曲に出来ないのかな。

玉三郎にたっぷりとつきあえるそんな3時間ではありました。

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