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May 2008

May 25, 2008

文楽 心中宵庚申

2008年 5月20日。16:00開演。
国立劇場へ、住太夫さんを聞きに走る走る。

わたしを文楽にすとんと落としてくれた人間国宝(いよっ日本一!)

お人形ももちろん綺麗。でも、住太夫さんが語る娘や父親や婿養子たち。
ご本人もおっしゃっているように、美声ではない。むしろ悪声なのかもしれない。
しかし、浄瑠璃語る住太夫さんの中から、人の情そのものが聞こえてくる。見えてくる。

その声は、まるでオーケストラのよう。それぞれの想いが響き合って、劇場いっぱいに満ちてゆくよう。
オペラもこんななのかしら・・・・。
野澤錦糸さんのお三味線は、住太夫ワールドに流れるビタミンかミネラルか潤滑油か。
出過ぎず引きすぎず、住太夫さんの後になり先になって連れ添ってゆくのが心地よい。

2幕は八百屋の段。浄瑠璃は嶋太夫さん。住太夫さんより声が良くたっぷりと聞かせてくれる。お三味線も太夫にあわせてゴージャスな響き。
なにしろ、ここは脚本がすごい。近松門左衛門さん、よくこんなえげつない人間を描くなあ。意地悪姑の独壇場です。

3幕が、お千代と半兵衛、道行きの悲劇。
太夫、三味線が4人ずつずらりと並んで、豪華な音の競演。舞台にはお千代と半兵衛ふたりきり。あふれる心情と現実の身のさみしさかなしさの、対比が見事。
お千代がきれいできれいで。哀しいとなぜあんなに綺麗なのか。桐竹勘十郎さん、吉田蓑助さん、そこにいるのに、その姿は消えて、人形が生きる。
お千代が死んで、死んだとたんに人形になって、あ、人形遣いの蓑助さんがまだひかえているな、と初めて意識して。
文楽って、物語はドロドロの人間ドラマだったりするのに、言ってみればしょーもない人間の性を、浄瑠璃、三味線、人形遣いそのどれもが壮絶に凄い技で、一心に描くのね。よほど人間が好きでないと出来ないと思った。

そして、仁左衛門さんと玉三郎でも見たいと、わたしも思いました。
人が演じる吸引力もまた、捨てがたく。

人形浄瑠璃から歌舞伎へ、こんなふうに進んだのですね。


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May 06, 2008

スタジオライフ 夏の夜の夢

5月3日 マチネ スタジオライフ 夏の夜の夢

GWの思わぬ拾い物!happy01

トーマの心臓など萩尾望都さんの作品を男性だけで舞台化する劇団。
大好きな萩尾望都さん。しかし・・・躊躇していた。少女マンガの世界の「実写版」はちょっとこわい。
役者にもコアな観客にもついて行けないような気がする。

気が変わったのは、3月、本多劇場でカトケンと共演した山本芳樹くんが良い感じだったから。
山本くんを見ようかな。オケピに出ていたチケットをゲット。

シアターサンモールは少々妖しいゴシック風の建物。
場内は慣れたコクーンやパルコに比べるとそこそこ狭い。
この狭さでは、役者がおけジャニ学芸会だと、息ができないぞ。妙な緊張。

さて、始まった。

初めはね、今時の男の子の、なんだか似合ってるお化粧の顔に、素人臭い舞台かと思ったの。しかし、
どうしてどうして、
高校の文化祭のノリでいながら、シェークスピアをきっちりとしゃべっている!
全編、最後まで、ほぼどの役者も、きっちりと、シェークスピアをしゃべりきった。お見事!
去年の蜷川「お気に召すまま」よりも、はるかにシェークスピア劇の世界だった!

妖精の女王、妖精の王様。ちゃらけているようで貫禄十分。自分に酔っている重厚感が良い。
彼らは観客の前に繰り広げられるばかばかしい夢の世界を指揮する者。

公爵と新妻の堅さも、間違っていない。この作品の登場人物の中で唯一「観客側」の人物なのだから。
新妻は最後に夢の語りと農民の演じる劇を見て、自分のかたくなな心の中に隠された愛に気づく。その場面が観客の気持ちと一緒になって感動的なのです。

そのほかの登場人物たちはみんなあっちの世界の住人。妖精たちは無論のこと、行き違う二組の恋人たちは夏の夜の夢を見る張本人たちなのだし、劇中劇を演じる農民たちも演劇というあっちの世界に行っちゃってる人たち。二組の恋人たち、夢の中にいるときは頭にいかれた花つけて。

つまり、あっちの世界へ行っちゃっている者どもが、こちらの世界の観客に「真夏の夜の夢」を披露して、
私たちがあっちの世界のばかばかしさを笑う。
笑いながら、その笑いは実は、自分たちの姿が写っている笑い、
それがこの作品の真髄なのです。
とってもよく分かった。本当によく分かった。
脚本・演出の力がシェークスピアのど真ん中を貫いたのですね。快感でした。

去年の「十二夜」でも思ったけれど、シェークスピアは男性だけの役者の世界で演じてこそ。
彼の女性への毒は、女性が演じると、見ていて痛くなる。
男性が演じれば「異形」の真実になる。
浄瑠璃は人形が演じてこそ生臭さが無く、歌舞伎は男性が演じてこそうそっぽさがない。美しさが切っ先のように表出する。シェークスピアもまた、男性が演じてこそ、人間の真実がそのまま見える。

そんなわけで、スタジオライフでシェークスピア、次作も期待します。

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