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July 31, 2008

かもめ 初日 

6月20日 金曜日 19:00 赤坂actホール

竜也の舞台を見に行ったのか、栗山さんの演出を見に行ったのか、半分半分。           

栗山民也さんて、すごいな・・・と、ひたすらそれを堪能した。

チェーホフが好きだというのは栗山さんの才能なのですね。
わたしには物語のないせりふがただ続いているだけの戯曲としか思えなかった。
栗山さんの頭の中には、ひとりひとりの人物が持つ見えない物語がくっきり見えているのですね。
演出家にはその才能が必要なのですね。

「人はみな、その人の物語を抱えて生きている。」
言葉では知っていても、現実には、
表面にわかりやすく「見えてる」ものを消費するだけでせいいっぱい。

これでもか、と見せに見せてくれるエンターテインメントばかりが流行るのは、
見えない物語を見る力が、「みんな」の中からもう無くなって、
ひとりひとりの心のなかでさえ、もう絶滅品種だから。

そんな時にチェーホフ? と、思っていた。

そんな時だからチェーホフ、 という栗山さんの答えでした。        

「みんな片思いしている」すれ違いのひとたち。
あらわれているものだけを見ればまとまりが無く退屈でしかない。
あれだけの人間が同じ場にいながら別々の物語の中にいて。

ポリーナ(藤田弓子:執事の妻、マーシャの母)はドールン(中嶋しゅう:医師)に愛を求め、
メドヴェジェンコ(たかお鷹:貧い教師)はマーシャ(小島聖:執事夫婦の一人娘)に思いを寄せ、
マーシャはトレープレフ(藤原竜也:屋敷の一人息子)を追い、
トレープレフはニーナ(美波:女優志望の若い娘)を求め、
ニーナは、トレープレフからあっという間にトリゴーリン(鹿賀たけし:作家)への恋に落ち、
トリゴーリンはアルカージナ(麻実れい:女優、トレープレフの母)とニーナにふたまたかけ、
アルカージナは息子を愛したことはなく、トリゴーリンを愛していると勘違いしているが、本当に愛しているのは自分だけ。

芸達者な役者たちが、哀しいすれ違いを、愚かな人たちとして見せてくれました。

鹿賀さん、科白が無く舞台の上にいる、存在感。
トリゴーリンがそうであるように。
女優アルカージナの愛人で、若いニーナもものにする。言葉は小説書きの仕事のタネであり女を口説くときの道具。それだけのためのもの。言葉も女も、彼にとっては食事と同じ。黙って立っているだけが一番得だと知っていてそこにいる男。

麻実れいさん、よく考えればとんでもない女を、麻実さんはすかーっと演じて誰も彼女に勝てない憎めないと、思わせちゃう。一度も母でなかった女。

美波さん、見たいものだけをまっすぐに見て、「あなたのお芝居はわからないわ」「わたし女優になるの」「トレゴーリンさんが好きなの」。無邪気な強さと残酷さををまっすぐに演じる。

脚本を読んだときにさっぱり面白くなかったはなしが、すとんとよくわかったのです。

ロシアの孤独。彼らはナロードニキと同じ。名家に生まれたインテリ青年たちが、農民のためと信じて富も家族も捨てた果てに、農民からも社会からも認められず受け入れられず、テロに走って消えていったあの人たちと同じ。
本人たちが苦しく切羽詰まっていればいるほど、向き合って物語を共有する言葉がひとつもないすれ違いの人々のすがたは、
はたから見れば、喜劇でしかない。
しかも、悲劇だと自己満足することも許さない潔癖を、きっとチェーホフはもっていた。だから、「4幕の喜劇」。

「作者本人が喜劇だというなら、チェーホフって、相当意地悪だよね」
なるほど。

だけど、チェーホフは難しい。
悲劇なら観客に訴えられるし、面白い喜劇なら観客を飲み込める、でも、面白くない喜劇ですよ。遠くから見るチェーホフは、喜劇としてとらえようとすればするほど、散漫になってゆく。それが大劇場の商業演劇として成立するのか。観客の満足感という意味で。

そして、竜也。

小説への自負も、恋人への思いも、母への思いも、召使いの娘の献身も、医師の励ましも、小説家としての成功さえ、ひとつも彼の人生を養う果実にはならず、彼をさいなむだけの棘でしかなく、人生にひとつの果実さえ作れずに行き着いた死を、演じようとしたのだと思うけれど。

それを、この舞台で、彼の演技で演じると、過剰になる。
たぶん、彼の物語を見せすぎているのだと思う。チェーホフも演出家もそれを望んでいないのに。

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Comments

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