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April 06, 2009

四月大歌舞伎  吉田屋

2009年4月5日 日曜日 夜の部

一幕の毛谷村は吉右衛門さんと福助さん。
山家に住む剣の達人六助をおおらかに吉右衛門さん、臼をもちあげるほどの怪力の娘をコミカルに福助さん。
両人とも上手で楽しい芝居でした。

本日のお目当ては二幕目。
吉田屋 夕霧伊佐衛門廓文章。

幕が開き、舞台正面いっぱいに遊郭吉田屋のおもて。出だしに田舎侍の餅つきなど見せたあと、
花道が明るくなって、仁左衛門さんの登場です。
大店の跡取りながら親に勘当されて今は紙衣装の藤屋伊佐衛門。
紫の地に、そでと身の黒に金字。深く被った笠の下から白い顎がちらりと見えます。
夕霧に会いたいけれど今は零落した身の上、顔を見せられない恥ずかしさ、それでも吉田屋の前まで行ってしまう心模様。
立って良しとは、この姿のことですね。
恥ずかしげに、しかし、育ちの良さが美しく、柔らかい着物の線が花道にすっと立つ。美しい。紫に黒、金、そして手と顎の白。美しい。お顔が見えないのに、立っているその姿がすでに一本の若木のように美しい。

この伊左衛門が夕霧に会いたい心を吉田屋の夫婦に察して欲しくてすねる。かわいい。
心の中でこれはただの甘ちゃんの馬鹿殿じゃないか、と思っても、
目の前の伊左衛門はとにかく可愛い。こんなに可愛い若旦那のためなら、周りの人間はみんなお世話をしたくなっちゃうよ。
これ、仁左衛門さん以外にはできないでしょう。他の誰がやっても、あほな勘違い男になっちゃうでしょう。
仁左衛門さんの若旦那だけが、すねてもだだをこねても一途に愛らしい。
姿が良いだけではこの役はやれません。心にひとつの曇りもない、無邪気が雅気になる、そういう男を演じなくてはならない。

仁左衛門さんの伊左衛門は完璧です。

奥行きのない舞台のはずなのに、幾重もの襖を開けて、廊下をまっすぐに小走りにして奥の部屋に夕霧を見に行く。夕霧恋しのはやる心。うまいなあ、あの小走りの表現の巧みさ。舞いの名手だから出来るのですよね。
物語の大半が夕霧を待つ若旦那なのです。1時間、それだけを見せるのです。しかし、少しも飽きない。舞いのように体が動き、謡のように声が伝わる。

夕霧が来ます。客席は伊左衛門と一体になって、夕霧を待ちに待っています。待ちに待って、
伊佐衛門の「来た」
そっぽを向いてすわり、やはり正面に迎えるように座り直し、なかなか来ない夕霧にすねて布団の中にもぐってしまう。
そうして、やっと、観客の正面奥の奥の襖が開いて、夕霧が現れます。

玉三郎。
今まで見た玉三郎さんの中で、いちばん美しかった。綺麗だった。綺羅のようでした。
立っているその姿から光が立つ。あんなに美しい玉三郎さんを見たら、きょうはもうこれで良し。
おおきな鬘に銀のかんざしがいくつも揺れる。
黒い地に銀糸金糸の花が満ちる打ち掛け。その下から紅いそで。白い手。
まんなかに文楽の人形のようなちいさなお顔。

伊左衛門がすねてもぐっている布団の傍らに手をそえて座る玉三郎と布団から小さく見え顔が見える仁左衛門。

この夕霧だから、伊左衛門は待ちに待ったし、
この伊左衛門だから、夕霧は病のなるほど焦がれて来たのです。

どちらが欠けても存在し得ない。

仁左衛門さんが舞い、玉三郎が脇に座っている。姿の美しさは心の美しさによって映える。
もう、それだけで、十分でした。
どちらが欠けてもあり得ない、一幅の美しい錦絵を見せていただきました。
ありがとうございました。

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Comments

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