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January 2011

January 29, 2011

ろくでなし啄木

2011年 1月7日 金曜日 18:30 池袋芸術劇場

場所が良い。芝居見てすぐに家に帰れるアクセス。快適。

観客が妙な感じ。あとから理由がわかった。一昨日、昨日はプレヴューで、この夜が初日だった。
業界っぽい人が多いなぁと思ったけど、「多い」というよりも、業界の内輪っぽい空気が、充満していた。
濃い匂い。関係者が反応し合って生まれる空気が過剰だった。

9:15  関係者の人たちも含めて、大勢のスタンディングオベーション。
その夜の舞台が終わってわき起こる拍手というよりも、2ヶ月の公演の幕開きへの拍手。「三谷幸喜生誕50年」のイベントの初日への拍手だったのだろう。

藤原竜也、中村勘太郎、吹石一恵
石川啄木、友人のテツ、恋人のとみ。
仙台に近い旅館の部屋である夜、石川啄木の人生を変えたできごとがあった。
その夜3人に起きたことは何だったのか。3人のそれぞれに語らせる・・・・たぶん三谷さんは「藪の中」をねらったのだろうと思う。

美術がおしゃれで、手前と部屋と奥の部屋をしきる大きな3枚の障子の動きが良い。

2幕中盤、竜也と勘太郎くんが化学反応を起こして火花が散る場面もあった。

ただ、わたしには、見せ場はここだけだった。

役者は3人とも悪くなかったと思う。勘太郎くんのお人好しとヤシの落差。竜也も久しぶりに哀しくきれいに見える場面があった。

でも、啄木に謎解きをさせる最後のシーン、ああいう場を得意とするのはショートークが得意な慎吾くんだと思う。竜也ではない。中途半端さだけが残る後味はつらい。


で、約1週間後の1月15日 土曜日。マチネ。

この日は観客も普通の演劇好きの人々で落ち着いている。

舞台は1週間でずいぶん進化&深化していた。
勘太郎くんの芸達者、吹石さんの一生懸命さに竜也のリズムが上手く合ってきている。

頭が良くて駄目でずるいピンちゃん(啄木)、ピンちゃんを好きで好きでたまらない素直なとみさん(富子)、お金も友情もあげっぱなしの人の良いテツ。

1部のコミカルな掛け合いを勘太郎くんがテンポよくひっぱり、3人の呼吸もあって、この夜に起きた表の筋を心地よくみせてくれた。
一転して後半では、この夜、二人の男に起きたに真情が明らかになる。
啄木のずるさと弱さ、てつさんの優しさと強さ。そのどちらもが切ない。

特に「最悪な男にさえなれない」啄木とてつの場面からは竜也らしさが全開。
このあと、初日では中途半端でちぐはぐだった幽霊になった啄木も竜也の独壇場になって、作品全体を良い緊張感でしめていた。

啄木の役が竜也の(数は少ないけれど深い)ツボにうまくはまってきたと思う。
と同時に彼にはあれしかない、その限界が苦くもあったけれど、
そこにいたのは、テツととみさんと竜也だったから。

それでも、面白かったね!と観客同士がうなずき合っている客席の空気はやはり好きだ。


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志の輔らくご in PARCO

2011年 1月 17日 (月)

渋谷のパルコの志の輔さんも今年で5年目でしょうか。

来年も来たいなぁ。こられるとよいなぁ。絶対来るぞ。

「だくだく」
これは古典なのだそうですが(ラジオとか出てきたので若干変えているのか、昭和初めの噺なのか)
貧乏長屋。壁にたんすや床の間の絵を描いてしのぎ、そこに泥棒が入るお話。

二つ目が「ガラガラ」新作の一つで、商店街の福引きのお話。
昭和の匂い満載で、すでにこれも古典のおもむきかも。最後に町会長さんが7つも入ってしまった1等豪華客船の旅の金の玉を絶対に出させないぞという気合い、ばかばかしい必死さ、これは志の輔さんの得意です。

さて、今年のメインディッシュは「伊能忠敬を素材にした新作、大河への道」

伊能忠敬さんのすさまじい凄さに打たれて「これを落語にしよう」と思い立って4年だそうです。
で、結局、あまりにも偉大、でも、彼がやっていたことは地味に歩くだけの17年、この偉人は落語の世界の人ではないと思い知ったそうです。
それでも、落語・・・志の輔話芸・・・にしちゃった。
志の輔さんのこれまた執念だったのかも。今年のパルコ客席は、この志の輔さんの心意気を見せてもらったのかも。

落語でもなく講談でもなく、落語でも講談でもあり・・・・志の輔ワールドの90分。

彼の落語は限りなく演劇だと思ってきたけど、
落語にならないなら、大河ドラマにしてくれい!って。

落語ではなかった。確かに。大好きな人情話でもなかった。ぼろぼろに泣くお話しでもなかった。

だけど、満足感いっぱいになる。
それは、志(ココロザシ)を見せてもらえたからなのだと思うの。
志の輔さんの志はココロザシの志。
わたしはそれを美しいと思うし、志の輔さんも美しいと思っているし、伝えたいと思っているし、満員の聞き手たちもまた知りたいとおもっている、そういう幸福な時間だと思うの。

伊能忠敬さんの志。伊能忠敬さんの周りに集まった人たちの志。
「余の国は美しいのぉ」という将軍の言葉に、私たちみんながうなずける夜。
この美しい国の本当の美しさはこの人々の心にこそあると。

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十二夜

1月19日(水)コクーン、ソワレ

松たか子さんが双子の二役。かわいくチャーミングでした。

十二夜はニナガワ歌舞伎の菊之助が素晴らしくけなげなオリビア姫でした。
麻阿役の亀治郎。思えば亀治郎の凄さに始めて打たれたのもあのときでした。

スタジオライフの十二夜はオール男性の勢いそのままの楽しい祝祭劇だった。

今夜の十二夜は串田和美さんのマルチな才能を堪能する夜。
役者が全部楽器を持って練り歩き、歌い、
どこか遠くにある異世界をのぞき見るような美術、
真ん中におかれた四角い台と四角い枠で、役者がマリオネットのようにも見える。

演劇と言うよりは、串田さんとその仲間たちの音楽と物語の小さな集まりというおだやかな空間でした。

感動や感激はないけれど、異世界をのぞき込んだような時間。

これもまた、舞台の一つではありましょう。

ナマの人間の芸の力という点では、
笹野さんの歌が上手かった。それから、石丸幹二さんを知りました。芸大を出て四季でずっと活躍なさっていたのですね。最初の一声で、おっっ声が良いぞ、と思い、歌にいたって心ときめかされました。

芝居に突然歌が出てくると妙な違和感ではずかしくなることがしばしばあるのだけれど、
笹野さんと石丸さんの歌はなくてはならない良い感じでした。

シェークスピアをこういう風に料理するのも、もちろんありなのでしょう。

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大人はかく戦えリ

大竹しのぶがチャーミングで。段田さんが情けなくて。

1月11日(火)ソワレ 新国立劇場 シスカンパニー

シスプロデュース得意の大人の役者の妙味満点。
脚本はフランスの女性作家ヤスミナ・レザ。


大竹しのぶと段田安則さん、秋山奈津子と高橋克実、この4人二組の夫婦のあいだにかわされる会話、交渉、言い合い、ののしりわめき、叫び、泣き笑いですすむ90分。

子どもの喧嘩にくらべて、「大人はこう戦うのよ!」という題名通りの展開、
観客は、他人のお馬鹿さを大いに笑ってすっきり。という作品です。

子どもの喧嘩に親が出て親の喧嘩になってしまう・・・って、個人主義のフランスでもある。世界中にあるのね。
その卑小さが普遍的テーマではある(笑)

演劇の深さを作る要素の一つは「舞台にでてこない登場人物の存在感」です。
このおはなしにも、舞台に出てこない登場人物がいます。二組の親のそれぞれの子ども。
それぞれの親がその子どもとどうつきあっているのか、それがくっきりとでてきて、どっちの子どもも他人からみればどこにでもいるしょうもないガキなんだけど、親にとっては可愛くて大切で正しい存在。あーほんと、この親の馬鹿な偏向ったら、自分の中にも周りの親の中にもうんざりするほどある。

そのうえ、フランス人社会ならではの微妙な社会的階級の差が見え隠れする。
弁護士夫婦の尊大と優越感と無関心。小間物販売をしている夫と社会問題にもアートにも関心を持つ自尊心いっぱいの妻。一皮むけば妻は夫に不満だらけだし、夫は妻に我慢しっぱなし。で、それを酒でまぎわらしている。
このへんは、たぶん、フランス人社会の孤独さでもあるのだろうな。

人間てあほやなぁ、というのをこういうふうに知的に見せてくれるのは小劇場の会話劇の楽しさです。
観客と演目がわたしに合っていて、客席でわく笑いにも共鳴できる幸福な空間でした。

自分の公平さや上質さをアピールするために冷静でいようとする被害者の子どもの母親、大竹しのぶさんが絶妙でしたねぇ。テンションの高さを抑えよう押さえよとする役がちょうど良い抑制になっていた。
段田さん、良い人を演じているけどずるいんだよねぁという役をこれもこれ以上ないというちょうど良さで。

対する弁護士役の高橋克実さん、健闘してましたが悪徳弁護士にしてはちょっと嫌みさや高慢さが足りなかったかな。秋山さんも上手な女優なのですが、大竹しのぶと対するには、少しストレートすぎたかも。

上流ぶっているけど実は下品な弁護士には内野聖陽、上品で気弱に装っているけど不平不満だらけの依存妻に寺島しのぶさんでやったら、さらにすごい芝居になりそうかも。

ともあれ、難しく考えず、人間てアホやと思えばよい楽しいお芝居でした。
 

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January 06, 2011

新春浅草歌舞伎 第二部

亀治郎さんが今演劇界でもっとものっている人の一人だということは、間違いないと思う。
そう実感させられた舞台でした。

お正月の浅草が良い!
なかなか人が進まない混雑の仲見世。縁起物を手にお参りする人であふれた境内。
この寿気分をさらに数倍増にしてくれる楽しい歌舞伎。

一つ目は壷坂霊験記

去年三津五郎さん、福助さんで見て地味な印象の演目。愛之助、七之助もあんまり深みを感じないしなぁ・・。
と、見る前に失礼な予想をしていたのですが、びっくりしました。
愛之助の盲目の沢市、七之助の女房お里。
若い誠実な夫婦を若さそのままに演じていて、失礼ながら今まであまり評価していなかったお二人を見直しました。

失明した沢市は美しいと評判の女房お里が毎夜留守にするのを邪推するのですが、お里は観音様に夫の目が明きますようにと祈願していたのでした。
これを知った沢市は自分の邪推を申し訳なく思いこれ以上お里の世話になるまいと谷に身を投げます。さらに夫を追ってお里も谷底へ。
ここに、観音様が現れてお里の献身に応えて二人の命を救い、沢市の目を開けて、めでたしめでたし。

以前見たときには二人のキャラクターが暗く観音様の功徳も重く感じたのですが、
今回は不幸せよりも暖かい献身につつまれた若い夫婦。
明るいのです。
演じ方だけでこんなに変わるものでしょうか。驚きました。
愛之助の沢市はどこか愛嬌があるし、お里は素朴でかわいげがあって、ちょっとおきゃんでもある。
若者を若者が演じるのがやはり自然なのでしょうか。浅草の観音様をお参りして見るのにふさわしい明るさがとても良かった。
愛之助さん、七之助さん、お見それしました。愛之助さんは昨年十二月の南座で海老の代役で喝采を浴びていますが、納得です。
七之助さんもお父さんやお兄さんからすこし離れて自分の道を探し始めたのでしょうか。
二人共に自信と勢いを感じました。


二つ目は黒木曲輪逢引、助六のパロディ作品。

こちらも2度目で、一昨年大阪に仁さまを見に行ったときに見ている・・・・と今さっき知った(笑)・・・・菊五郎さんが助六をやっている・・・・全然覚えていない・・・仁さまの熊谷陣屋に集中しすぎて次は寝ていたのかも・・・ごめんさない。市川本家の団十郎さんの助六由縁江戸桜も見ている・・・・で、この時は助六は若者がやらんとなぁ、と思い、息子さんの海老の助六にはファンが多いことでしょうが・・・とりあえずお話しとしては何ということもなく、わたしの好みの歌舞伎とは違う路線、と思っていたのだけれど、

亀治郎、すごい。
彼自身がもう少し太りたいという意味も分かった。助六をやるにはたしかに足が細すぎる。唯一そこは弱点だった。
しかーし、演技の幅、面白み、かっこよさ、すごみ、どれもこれもが観客を楽しませ喜ばせるためにある。成田屋さんちのように天性の外見には恵まれていないから自分の美しさに甘えられる役者じゃない。それが、かえって彼の賢さに良かったのかも。

かれの「計算」がもっとも効果を発揮するのが早変わり。
観客を驚かすのは第1に衣装や化粧の見た目をあっという間に変えることではあるけれど、それだけでは所詮飽きる。観ているものの舌を巻くのは役の心根の落差を一瞬で演じ分けること。これが観客の心を長くいつまでも驚かせる。
亀治郎はその早変わりの両輪を理解し尽くしているのね。

第1幕、花魁白玉にだまされた権九郎の情けなさで笑わせ
花魁の情夫牛若伝次で女の心を奪い尽くす色悪で凄む、
二人がどこで入れ替わったのか、観客は「変わった」ことにさえしばらく気づかないくらいで、拍手より連れに尋ねるざわめきがおきていました。
しかも、池に落とされた権九郎にもう一度早変わりして、出演役者の名前を入れた言葉遊びに、去年の大河の龍馬伝のネタで笑わせ、「顔がそっくりの従兄弟」には爆笑・・・役者としても凄いけど、猿之助さんの演出なのか、亀の演出なのか、とにかく楽しませることに徹底している。

そして2幕目3幕目、助六ってこんなにかっこいい江戸っ子のお話だったのか。
姿形もさることながら、気持ちがいい。気持ちがいい男だったのね。

紀伊国屋文左衛門の愛之助。時々仁さまに見えました。場を支配する大きさを見せてました。
敵の新左衛門の亀鶴。このひとがまたきれいな悪で、こんなにきれいな人だったっけ???
主流じゃないので露出が少ないなんて、松竹はんほんまアホやわ。
助六と新左衛門の立ち回りも、今まで見た歌舞伎の立ち回りからは突き抜けようとしている姿勢があった。
これなら新感線の舞台の早乙女くんの立ち回りを目指して欲しいと思えた。

そして、さらにびっくりが揚巻の七之助。
今日は亀を見に行ったのだけど、七之助のたんか、勢いがあって。彼のやんちゃが上手く役にのったのね。
七之助におちゃめでいて男に尽くす女を見ました。

亀には、共演者を上手に演じさせる才能があるような気がする。演出は猿之助さんとはいえ、実質亀治郎なのではないかしら。
ニナガワシェークスピアの菊之助、じゃじゃ馬馴らしの筧さん、吃又の勘太郎。
思えばみんな凄く良いリズムで演じていた。

最後は助六の亀が火消し用の大きな桶に全身飛び込む。3列目のわたしの席の正面で水はびしょびしょにはねるし、滑らないか冷たくないかはらはらしっぱなし。で、とにかく楽しかった。

江戸時代の歌舞伎はこんなふうに勢いがあった、それが本来の歌舞伎の姿・・・亀が言いたいことはそれに尽きるのよね。きっと。

楽しかった。
ほんと、亀治郎の太腿が華奢なのが残念、ほか、言うことなしだったなぁ。

良い町、良い風情、良い歌舞伎を良い席で見て。こいつぁ春からエンギが良いなぁ。

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