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January 06, 2011

新春浅草歌舞伎 第二部

亀治郎さんが今演劇界でもっとものっている人の一人だということは、間違いないと思う。
そう実感させられた舞台でした。

お正月の浅草が良い!
なかなか人が進まない混雑の仲見世。縁起物を手にお参りする人であふれた境内。
この寿気分をさらに数倍増にしてくれる楽しい歌舞伎。

一つ目は壷坂霊験記

去年三津五郎さん、福助さんで見て地味な印象の演目。愛之助、七之助もあんまり深みを感じないしなぁ・・。
と、見る前に失礼な予想をしていたのですが、びっくりしました。
愛之助の盲目の沢市、七之助の女房お里。
若い誠実な夫婦を若さそのままに演じていて、失礼ながら今まであまり評価していなかったお二人を見直しました。

失明した沢市は美しいと評判の女房お里が毎夜留守にするのを邪推するのですが、お里は観音様に夫の目が明きますようにと祈願していたのでした。
これを知った沢市は自分の邪推を申し訳なく思いこれ以上お里の世話になるまいと谷に身を投げます。さらに夫を追ってお里も谷底へ。
ここに、観音様が現れてお里の献身に応えて二人の命を救い、沢市の目を開けて、めでたしめでたし。

以前見たときには二人のキャラクターが暗く観音様の功徳も重く感じたのですが、
今回は不幸せよりも暖かい献身につつまれた若い夫婦。
明るいのです。
演じ方だけでこんなに変わるものでしょうか。驚きました。
愛之助の沢市はどこか愛嬌があるし、お里は素朴でかわいげがあって、ちょっとおきゃんでもある。
若者を若者が演じるのがやはり自然なのでしょうか。浅草の観音様をお参りして見るのにふさわしい明るさがとても良かった。
愛之助さん、七之助さん、お見それしました。愛之助さんは昨年十二月の南座で海老の代役で喝采を浴びていますが、納得です。
七之助さんもお父さんやお兄さんからすこし離れて自分の道を探し始めたのでしょうか。
二人共に自信と勢いを感じました。


二つ目は黒木曲輪逢引、助六のパロディ作品。

こちらも2度目で、一昨年大阪に仁さまを見に行ったときに見ている・・・・と今さっき知った(笑)・・・・菊五郎さんが助六をやっている・・・・全然覚えていない・・・仁さまの熊谷陣屋に集中しすぎて次は寝ていたのかも・・・ごめんさない。市川本家の団十郎さんの助六由縁江戸桜も見ている・・・・で、この時は助六は若者がやらんとなぁ、と思い、息子さんの海老の助六にはファンが多いことでしょうが・・・とりあえずお話しとしては何ということもなく、わたしの好みの歌舞伎とは違う路線、と思っていたのだけれど、

亀治郎、すごい。
彼自身がもう少し太りたいという意味も分かった。助六をやるにはたしかに足が細すぎる。唯一そこは弱点だった。
しかーし、演技の幅、面白み、かっこよさ、すごみ、どれもこれもが観客を楽しませ喜ばせるためにある。成田屋さんちのように天性の外見には恵まれていないから自分の美しさに甘えられる役者じゃない。それが、かえって彼の賢さに良かったのかも。

かれの「計算」がもっとも効果を発揮するのが早変わり。
観客を驚かすのは第1に衣装や化粧の見た目をあっという間に変えることではあるけれど、それだけでは所詮飽きる。観ているものの舌を巻くのは役の心根の落差を一瞬で演じ分けること。これが観客の心を長くいつまでも驚かせる。
亀治郎はその早変わりの両輪を理解し尽くしているのね。

第1幕、花魁白玉にだまされた権九郎の情けなさで笑わせ
花魁の情夫牛若伝次で女の心を奪い尽くす色悪で凄む、
二人がどこで入れ替わったのか、観客は「変わった」ことにさえしばらく気づかないくらいで、拍手より連れに尋ねるざわめきがおきていました。
しかも、池に落とされた権九郎にもう一度早変わりして、出演役者の名前を入れた言葉遊びに、去年の大河の龍馬伝のネタで笑わせ、「顔がそっくりの従兄弟」には爆笑・・・役者としても凄いけど、猿之助さんの演出なのか、亀の演出なのか、とにかく楽しませることに徹底している。

そして2幕目3幕目、助六ってこんなにかっこいい江戸っ子のお話だったのか。
姿形もさることながら、気持ちがいい。気持ちがいい男だったのね。

紀伊国屋文左衛門の愛之助。時々仁さまに見えました。場を支配する大きさを見せてました。
敵の新左衛門の亀鶴。このひとがまたきれいな悪で、こんなにきれいな人だったっけ???
主流じゃないので露出が少ないなんて、松竹はんほんまアホやわ。
助六と新左衛門の立ち回りも、今まで見た歌舞伎の立ち回りからは突き抜けようとしている姿勢があった。
これなら新感線の舞台の早乙女くんの立ち回りを目指して欲しいと思えた。

そして、さらにびっくりが揚巻の七之助。
今日は亀を見に行ったのだけど、七之助のたんか、勢いがあって。彼のやんちゃが上手く役にのったのね。
七之助におちゃめでいて男に尽くす女を見ました。

亀には、共演者を上手に演じさせる才能があるような気がする。演出は猿之助さんとはいえ、実質亀治郎なのではないかしら。
ニナガワシェークスピアの菊之助、じゃじゃ馬馴らしの筧さん、吃又の勘太郎。
思えばみんな凄く良いリズムで演じていた。

最後は助六の亀が火消し用の大きな桶に全身飛び込む。3列目のわたしの席の正面で水はびしょびしょにはねるし、滑らないか冷たくないかはらはらしっぱなし。で、とにかく楽しかった。

江戸時代の歌舞伎はこんなふうに勢いがあった、それが本来の歌舞伎の姿・・・亀が言いたいことはそれに尽きるのよね。きっと。

楽しかった。
ほんと、亀治郎の太腿が華奢なのが残念、ほか、言うことなしだったなぁ。

良い町、良い風情、良い歌舞伎を良い席で見て。こいつぁ春からエンギが良いなぁ。

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